こころの相談室 HALPRIMURA -春プリムラ- | HALPRIMURA(春プリムラ)は女性の方を応援するこころの相談室です。悩み事などに関するカウンセリング。子供の学校相談。子供との接し方。人間関係など

TEL080-1588-2390
三重県伊勢市岩渕1丁目15−11
開室時間 9:00〜17:00(平 日)
9:00〜19:00(土日祝)

花と母の思い出2

 母はいつも朝から晩まで働いている人でした。休みの日ものんびりと体を休めていることはありませんでした。普段の日は、たとえ仕事がなくても、自分から仕事を見つけては、何かせっせとしていました。

 母は、どんな思いでこの世を去っていったのだろうとよく思います。何も語ることなく。本当に潔く、と言ってもいいかのようにこの世に別れを告げていきました。母は、まだやりたいことがたくさんあったろうし、気がかりなこともたくさんあったでしょうに。

 母は感情的になることはほとんどなく、泣き言を言う人でもありませんでした。頑張って当たり前という姿勢を持っていて、私にもそのことを求めました。母は私のことを心配し何でも一生懸命してくれました。どうしてそこまで、と子ども心に思うことさえあったほどです。そして、私の成功には、私以上に喜んでくれました。母は私をほめることはほとんどしてくれませんでしたが、母の愛情をたっぷり身に受け成長してきたのだと今では思っています。母の思い出は、花の香りや母が作る料理のにおいとともに多くよみがえってきます。それは母が亡くなり年月を経るとともに私の心により一層鮮明になってくるのです。

 八手の実ほど母のことを強く思い出させる植物はありません。冬のお昼、よく母は餅を焼いてくれました。餅の香ばしいにおいが台所に立ちこめます。台所から庭の冬景色を見ると、曇ったガラス越しに八手の実が見えました。今も、八手の実を見ると、曇ったガラスから見える庭の光景、餅のにおい、母の立ち居振る舞いがよみがえってきます。母はいつも商売で忙しかったから、母が台所に立っているときは、何だかとてもうれしかったのです。ほうれん草を湯がいたにおい、新タマネギと新じゃがを煮るにおい、そして、休日の夜にすき焼きをするときのわくわくした思い、それらはいつも母の声とともによみがえってきます。

 ある牡丹雪の降る夜、急な配達で母が出ていったあと、私は店の戸のところに立ち、落ちては消えていく牡丹雪を母が戻ってくるまでずっと見続けていました。母が戻ると私は「積もるかなあ」と母に尋ねたような気がします。母は「もう雨に変わりそうや」と言っていた記憶があります。私はいつも母の姿を探し、追い求め続けていました。実家の庭には、たくさんの木や花が植えられていて四季折々に、花や香りを楽しむことができました。私は、ひとり庭にいて花を見ているのが大好きな少女でしたが、寂しがりやでもあったようです。
 梅の季節になると家族で梅もぎをしました。本当にたくさんの実が採れました。この収穫の1日はとても楽しいものでした。今も、かごいっぱいの梅の実の思い出は夏に近い太陽の日差しとともに私の脳裏によみがえるのです。母は家の梅で梅酒や梅干しを作っていました。

 庭には離れがあり、その縁側から庭を見渡すことができました。私はこの縁側から庭を眺めることも好きでした。四季折々それは移り変わる絵のようでした。なかでも私の愛した絵のひとつは初夏のものです。火のような真っ赤な花をつけた大きなツツジの木があり、時折、真っ黒なチョウが飛んできて止まり、しばし羽を上下させるのです。それは私にとって、見ていて胸の高鳴る絵でした。真っ赤なツツジと真っ黒なチョウの競演はなんともすばらしいものでした。私はこのチョウを見る度、母に話しました、今日も来ていたよ、と。私はひとりこの離れにいて、よく静かな時を過ごしたものです。

 親というものは近くにいるときはそれほどまでには思わなくても、遠く離れたり、また亡くなったりしてしまうと、いろいろな感情を強く深く心の中に起こさせてくれる存在なのだと思うのです。ある人が、親ほど腹の立つものはない、などと言うのを聞いたことがあります。それも正直な気持ちなのだと思います。でも、いなくなったら、どれほど自分自身と分かちがたい存在であるのかを思い知らされるのだと思います。親子の間というのは、そんなものなのでしょう。いくつになっても、そして男性であっても女性であっても、母親は温かくなつかしい存在です。それ故、母というのは「悲しい」存在なのかも知れないとふと思うことがあります。

 


スポンサーサイト

  • 2019.10.16 Wednesday
  • -
  • 14:07
  • -
  • -
  • by スポンサードリンク

コメント
コメントする








   


↑ PAGE TOP

Copyright© こころの相談室 HALPRIMURA -春プリムラ- All Rights Reserved.